下記リンクをクリックすると対象の位置へスキップできます。
用語集 か
カーケンダール効果: カーケンダールによって行われた実験により名付けられた現象。純銅と七三黄銅(70%Cu-30%Zn)を接合し、CuとZnの拡散を観察した結果、黄銅側へ拡散するCu原子よりCu側へ拡散するZn原子の方が多いことがわかり、拡散速度が異なることを示している。このことから拡散によって移動した原子の数が異なり、界面は移動することから質量の移動があると言える。
介在物: 金属母相に溶け込むことができない不純物が不純物原子の塊、もしくは他の元素と化合物を形成しているもの。
回復: 金属を加熱すると空孔などの格子欠陥が拡散し、転位の再配列および異符号同士の合体消滅が起こる。これによりエネルギー的に安定な状態へ向かうことをいう。再結晶の前段階。
界面: 相と相、結晶粒と結晶粒など隣り合う異なる性質を持つもの同士の境界のこと。
過共晶: 共晶反応が起こる合金組成より濃度が高い状態。
過共析: 共析反応が起こる合金組成より濃度が高い状態。
拡散: 濃度差のあるAとBの間で、原子の移動などによって濃度が均一化されていく現象のこと。金属では粒内、粒界および表面において拡散が起こる。
拡張転位: とある格子の基本ベクトルaがエネルギー的に安定なベクトルb,cに部分転位として分解した時、積層欠陥が導入される。この状態にある転位を拡張転位という。
加工硬化: 金属は加工によってひずみが導入され、蓄積することにより硬度が上昇する。これを加工硬化と呼び、金属の強化機構の一つである。
過時効: ピーク時効より長時間側。
加速クリープ: クリープは段階的に律速過程が変わり、加速クリープでは転位密度の減少が律速する段階で定常クリープの後に発生する。その結果変形量が大きくなり破断まで一気に変形が進行する。
カソード: 電子を受け取る側の電極のこと。電池で言えば陽極、電解反応で言えば陰極のことを指す。
金型: 溶融、固液共存状態で流し込みんだり、打ち抜きや所望の形状に塑性加工するときに製品形状をかたどった金属製の型。
過飽和固溶体: 金属元素中に過飽和にもう一つ以上の元素が固溶した状態。
上降伏点(応力): 通常の降伏点(応力)と同義であるが、特に下降伏点が見られる金属で区別するために呼ばれる。
過冷却: 冷却中、凝固点に到達した瞬間に凝固せず、融点より低い温度まで相が変化しないこと。
完全結晶: 欠陥を含まない理想的な結晶構造を持つ結晶のことで、理論的には実際の金属の強度よりも高い強度を有する。
完全転位: 単位格子における原子から原子の距離を表したバーガースベクトルを持つ転位は、その位置から離れて転位が移動するもしくは外に抜け出すと元の欠陥のない結晶構造に戻る。この時の転位を完全転位と呼ぶ。
用語集 き
機械的性質: 強度(最大応力、降伏応力...etc)やn値、r値など加工性に関わる力学的性質の総称をいう。
菊池パターン: 材料に対して電子線を当てたときに発生する回折パターンで、EBSDなどの解析を行う際に用いられるパターン。
逆極点図: 観察した面において結晶面の垂線方向を求めてプロットすることにより、観察面にある結晶粒がそれぞれどちらの方位を持っているか示した図。EBSDでよく用いられ、等価な方位を省略した簡単な(001)(101)(111)の3点で囲われた三角形内で色分けし、結晶粒に色付けすることで視覚的に方位関係が分かりやすいように示される。
凝固: 鋳造などで高温にさらされ溶融した金属が固まること。
共晶: 2種類の固溶体を形成する共晶型合金の時に起こる現象で、α相とβ相がある場合に同時に晶出すること。
共析: 固相を形成した状態から更に冷却していくと固相から別の組成を持った固溶体が析出する場合がある。この時2種類の固溶体が同時に固相から析出することをいう。
極点図: とある立方体の結晶構造において、それを中心として囲むように球体を描くとする。立方体のとある面に対して垂線を球面上に引っ張ったときの交点がその面の極点であり、このように結晶面を球体に投影し極点を描くものを極点図という。普通は球体を2次元的な円で表す。観察した方向から見てどの角度にどの結晶面を持つかを理解できる。
巨大ひずみ加工: 通常の塑性加工に比べて大きいひずみを導入することにより、超微細粒組織を形成することによって高強度化を図る加工法。厳密に定義されていないが一般的に相当ひずみで5以上のものが当てはまり、HPT(High Pressure Torsion)やECAP(Equal Channel Angular Pressing)などによる加工がある。
均一伸び: 引張などによって金属全体が均一に変形した範囲における伸び。塑性不安定点に達し、ネッキングが開始する前までの伸び。
キンク: 変形機構の一つであるが特に六方晶の圧縮で起こり、座屈したような形状で変形するためすべり線は屈曲している。同一すべり面上で原子の階段状になる。
均質化: 鋳造などによって凝固した金属組織は偏析や晶出・析出物の状態が極めて不均一な状態である。これを均一な状態にすることを均質化と呼ぶ。
金属間化合物: AとBの金属を混ぜ合わせたときに、A2BやAB2など簡単な整数比を持った状態でAやBとは異なる結晶構造を形成した化合物のこと。
用語集 く
空孔: 原子が規則正しく配列した結晶構造において、格子位置に原子が無い箇所のこと。
くびれ: ネッキングを参照。
クリープ: 金属をある一定温度、一定荷重の環境に置いた時、時間の経過で変形が進行する現象のこと。
用語集 け
結晶: 一定の原子配列を持ち、それが規則正しく並び続ける構造を持ったもの。
結晶方位: ある角度で結晶を観察したときに、その方向と垂直関係にある結晶が持つ面方位のこと。
結晶粒: 規則正しい結晶構造を持った単一の結晶で、米粒(grain)のような形をしていることから結晶粒と呼ぶ。
結晶粒界: 結晶粒と結晶粒の間にある界面のこと。基本的に方位差を持つ。
結晶粒微細化: 結晶粒を微細にすることで、ホールペッチ則に従って強化されること。
用語集 こ
合金: 2種類以上の元素を組み合わせることにより出来る。純金属の原子配列に置換したり侵入することによって純金属にない特性を発現する。
交差すべり: らせん転位が活動中のすべり面から隣接したすべり面へ移動すること。Cross Slipとも呼ばれる。
格子拡散: 結晶粒内における拡散のこと。一般的な拡散現象の一つである。
格子欠陥: 結晶格子中にある空孔や置換・侵入した格子間原子などの点欠陥や転位などの線欠陥、積層欠陥などの面欠陥に分類される欠陥の総称。
格子ひずみ: 固溶体の溶質原子や不純物の存在によって結晶格子には本来の格子定数を維持できずにひずみを生じる。置換したり侵入する原子半径によって応力場が変化する。
孔食: ある一点で腐食反応が進行し、溶出あるいは削り取られながら孔を形成すること。
剛性率: 材料にせん断力がかかるときに、弾性的に変形する領域におけるせん断力とせん断ひずみの比。
降伏: 弾性変形領域と塑性変形領域の間にあり、金属が降伏を迎えると塑性変形が開始する。
降伏応力: 金属が降伏するときの応力。
固相: 凝固点を下回り、固体の状態になったもの。
コットレル効果: 溶質原子など母相の原子と異なる原子が存在するとき、原子半径が異なるため応力場を形成する。刃状転位も同様に応力場を持ち、これを緩和するために溶質原子が集まってくる。これによって転位が固着されすべりのために必要な力が大きくなる。この相互作用のことをコットレル効果と呼ぶ。
コフィン-マンソン則: 低サイクル疲労におけるcoffin則で与えられるεp(塑性ひずみ)と、高サイクル疲労におけるbasquin則で与えられるεe(弾性ひずみ)を足し合わせて、疲労における全体のひずみ範囲を表現した式。
固溶強化: 金属の強化機構の一つで、溶質原子が母相の結晶格子内に置換したり侵入することによって応力場を形成したり、コットレル効果によって転位を固着することによって変形抵抗が上昇する強化機構。
固溶限: 合金中に溶質原子が固溶できる限界のこと。
固溶体: ある金属元素中にもう一つ以上の元素が溶け込み、均一な状態となったもの。置換型や侵入型のように原子が入り込む位置によって種類が変わる。
混合転位: 刃状転位とらせん転位が組み合わさり両方の性質を持った転位のこと。